
こまちちゃんの優しさの根を育てた絵本シリーズ第一作
梅の香りが、まだ冷たい空気の中にやさしく混じるころ。
ひな祭りを前に、よしのおばあちゃんの家には、まだ開かれていない箱がありました。
春は、ただ待っていれば来るのでしょうか。
それとも――迎える準備があってこそ、そっと訪れるのでしょうか。
梅から桃へ。
知らせから、迎えへ。
こまちちゃんが気づいた、
日本の行事に込められた“整えるこころ”のおはなしです。
箱の中で眠る、おひなさま

梅が咲きはじめたころ。
やさしの森の空気は、まだ冷たさを残しながらも、どこかやわらいでいました。
よしのおばあちゃんの家の奥に、
大切そうにしまわれた箱があります。
「もうすぐ、ひな祭りだね」
こまちちゃんがそう言うと、
おばあちゃんは、ゆっくりとうなずきました。
けれど、まだ箱は開かれていません。
飾る前に、整える

「おひなさまはね、ただ飾ればいいわけじゃないんだよ」
おばあちゃんは、ほうきを手に取りました。
部屋を掃き清め、
窓を開け、
やわらかな風を通す。
「整えた場所に、よい気は宿る」
古くから、日本では“迎える前の準備”を大切にしてきました。
春も、行事も、
いきなりやってくるのではなく、
静かな支度の上に訪れるものなのです。
梅は知らせ、桃は迎える

「梅はね、春の知らせの花。
桃は、春を迎える花なんだよ」
おばあちゃんの言葉に、
こまちちゃんは目を丸くしました。
梅は寒さの中で咲き、
「もうすぐだよ」と教えてくれる。
桃は、やわらかな春の気をまとい、
その季節を迎え入れる。
ひな祭りに桃の花を飾るのは、
邪気を祓い、清らかな気で満たすため。
花には、ちゃんと意味があるのです。
▶︎ 梅がひと足早く咲いたお話はこちら
→ こまちちゃん風水日記㉝
灯りの中の、おひなさま

部屋が整ったころ、
ようやく箱が開かれました。
おひなさまは、静かな表情で並びます。
小さな灯りがともると、
部屋の空気が、ふわりと変わりました。
「春を迎えるって、こういうことなんだね」
こまちちゃんは、そっと手を合わせます。
春は、準備した人のもとへ

その夜。
窓の外では、桃のつぼみがふくらみはじめていました。
梅から桃へ。
知らせから、迎えへ。
季節は、急がず、
ていねいに重なっていきます。
春は、待つだけのものではありません。
整えた人のところへ、
やさしく訪れるものなのです。
▶︎「立春と三寒四温のお話はこちら」
→ こまちちゃん風水日記㉜
まとめ
ひな祭りは、ただの行事ではありません。
春を迎えるための、静かな準備。
部屋を整え、
気を通し、
花を飾る。
そのひとつひとつが、
暮らしをやわらかく整えてくれる。
梅から桃へ。
日本の季節は、ちゃんと意味を持って、続いているのです。
こまちちゃんの風水日記は、毎週金曜日に新作をお届けしています。
お楽しみにしてくださいね♪
― こまちちゃんより🐇





